僕の住む団地と公園をつなぐ一本道の、ちょうど真ん中あたりによしなが酒店はある。そのためにどうしても、毎日そこを通ることになる。客がいてもいなくても、いつでもよしなが酒店の扉は開いている。コンビニエンスストアに比べて照明は随分と薄暗い。だから夕方になるまでは、外から店内の様子は伺えない。

 店内に一歩足を踏み入れると、こもった空気と酒の匂いがした。
「おっ、亨じゃん」
 薄暗い店の片隅から、陽気な声がする。
「こんにちは」
 誰だっけ。確かオガタさんだかオカヤマさんだか。
「珍しいな。ここに来るなんて」
 次第に目が慣れてくる。彼はひっくりかえしたビールケースに座り、一人でカップ酒を飲んでいる。汚れた作業着を着て、少しだけ楽しそうに。
「おーい、長澤! 客だぞ」
「長澤じゃなくて吉永! なんど言わせるのよ」
 奥の住居部分につながるのれんをくぐって、吉永さんが出てくる。