よしなが酒店は僕の部屋より少し広い程度で、壁際の棚には酒や洗剤などの日用品が置かれている。のれん側の壁にはレジとカウンター。それから小さな古いテーブルといくつかの黄色いビールケース。店の中央の陳列棚には酒のつまみと駄菓子が並べられている。
 僕は目的のチョコレート菓子を手に取り、カウンターの上に乗せる。
「八十円ね」
 吉永さんはパッケージをちょっとだけ見てから、無表情のまま僕に言う。
「それ、うまいの? 俺にもちょうだい」
 部屋のすみに座っていたオオバさんだかオマエザキさんだかが陳列棚を指し示す。僕に取ってこいというのだ。僕は同じものを取って彼に手渡す。
「八十円!」
 吉永さんは彼の目を見ない。眉間に皺がよっている。若いころは美人だったのかも知れない。だけど僕が見る吉永さんはいつも機嫌が悪そうだ。
「金色のロックシードキャンペーン、これ集めてんの?」
「別に」
「集めてんだ。だからわざわざよしながなんかに来たんだろ」
 その言葉に、吉永さんはますます不機嫌な顔になる。
「亨、ちょっと待てよ。応募券やるから」
 彼はパッケージを開けようとする。薄暗さのせいか酔いのせいか、包装フィルムはなかなか剥がれない。
「いらない」
 僕は吉永さんからおつりを受け取って、よしなが酒店を出た。