十一月の日没は早い。夕方も五時を過ぎると、空は深い藍色へと変わっていく。
 僕たちは公園を出て家路を急ぐ。よしなが酒店の明かりは、さっきよりもずっと濃く灯っているように見える。

「とーおーるー」
 オオノさんだかオガワさんだか、頬を赤く染めた中年男性がよしなが酒店から出きて僕を呼び止める。
「亨、おい行こうぜ」
 友達が不安そうに僕の袖を引く。
「これやるってば」
 彼は汚れた作業着のポケットから菓子箱を取り出して僕に手渡す。チョコレート菓子の空き箱。
 友人二人が「もらうなって」などと小声でつぶやくのを聞いて、
「お前ら知らないだろうけど、俺は亨がこんな小さい頃から遊んでやってたんだからな」
 と、手で菓子箱くらいの大きさを示す。
「俺ら、先に帰ってるから」
 僕たちのやりとりを聞いて、安心したのか諦めたのか、友人二人は走って行ってしまった。

「それじゃ胎児だよ」
「じゃあこんくらい」
 手のひらと手のひらの間が少し大きくなる。ちょうどドッチボールくらい。
 店内では黄色い電灯の下で、カップ酒を飲んでいる男性が三人いる。それから不機嫌そうな吉永さんの姿も見える。
「亨、悔いのないように遊べよ」
 オノさんだかオダギリさんだかが、大きな手で僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。
 空はすっかり暗くなってしまっていた。