「来いって言われても」
 オーちゃんと呼ばれた少年は、するすると樹に登ってしまった。僕は幹を両手で掴み、片足をかけてみる。靴底がずるずると滑り落ちていく。
「登れないやつは、わが軍に来る資格はないぞ」
「ジャングルチームに行ってしまえ!」
 上から子供たちの声がする。
「じゃあ、そうするよ」
 僕は仲間に入れて欲しいなんて言った覚えはない。その場を離れてジャングルジムの方へ向かう。
「ちょ、諦め早いなー」
「待てよ、登り方教えてやるから」
 みんなが慌てて樹から降りてくる。クヌギ軍とやらのメンバーはオーちゃんを含めて五人。全員が僕と同じ年くらいの少年だった。

 彼らに引きずられるようにして、僕は樹の下に戻ってくる。
「最初にここに足をかけて、こっちの窪みを掴んで」
 根本のほうに、樹皮がめくれているところがある。みんなが足がかりにするので削れてしまったのだろう。
「やだな、虫とかいそう」
 目の高さより少し上にある窪みは、湿っていて深さが分からない。
「虫くらいいるよそりゃ。お前どっから来たんだ」
 僕は、どこから来たのだろう。
 オーちゃんの質問には答えずに、僕はその窪みをしっかりと掴んだ。