五人が寄ってたかって僕に木登りのやり方を教えてくれる。
「右手で押し上げて左手で引っ張る感じで!」
「ばか、そっちじゃねえよ」
「爪先じゃなくて土踏まずで登るんだよ」
「無理だよ」
 弱音を吐く僕の頭を、オーちゃんが軽く叩く。
「なんだそのごつい靴。脱いじゃえよ」
 他の子に靴を脱がされそうになる。

「こらっ!」
 赤いヨーヨーが飛んできて、オーちゃんの後頭部にごちんとぶつかる。
「いてっ! なにするんだよサユ!」
「また弱いものいじめして。許さないよ!」
 手元に戻ってきたヨーヨーを胸の前で構えて、その女の子はポーズを取る。
「樹に登れないって言うから教えてただけだ」
 オーちゃんが癖っ毛の後ろ頭を掻く。
「ほんとう?」
 サユと呼ばれた少女は近づいてきて、僕の目をじっと見る。
「いじめられてはないと思う……。多分」
「嫌なことは嫌って言わないとダメなんだからね」
 僕と同じくらいの背の高さで、だけど大人みたいな口調。不機嫌そうな表情がやけに凛々しく見える。