ウエハースチョコレートのおまけについている、キラキラしたシール。
「じゃあ、おまえたちそこで相撲をとれ。買った方にこれをやろう」
 酔って頬を赤くした男性が、シールを掲げる。
「よし! リュウタ来い」
「手加減しないからな、オーちゃん」

 二人はよしなが酒店の前で相撲をとりはじめた。裏通りとはいえ、車道で遊んでも叱る大人は一人もいない。それどころか見物しはやし立てている始末だ。
「やったー!」
 結局、勝者はオーちゃんだった。みんなの歓声があがる。いつの間にか公園から女の子たちも出てきて、勝負の行く末を見守っていた。

 遠巻きにこちらを見ていた女子の中に、長澤早百合もいた。呆れたように腕組みをして、でもちょっとだけ楽しそうな表情。
 僕の知っている吉永さん、すなわち旧姓長澤さんは、未亡人で、おそらく四十歳前後で、よしなが酒店のカウンターの中にいて、いつも不機嫌そうで。
 僕はポケットからあの錠前を取り出す。数字のダイヤルは『1985』に合わせられている。
「一九八五……年?」
 喧嘩する子供たちと、それを酒の肴にする大人たちと。よしなが酒店の前はとても賑やかだった。