夕焼け色だった空が深い青になっていく。自動販売機の明かりが真鍮の錠前を照らす。
「一九八六、一九八七……」
 オーちゃんたちの声を背中に聞きながら、僕は数字のダイヤルを回していく。ロックは開かない。
「……二〇一二、二〇一三」
 かちり、と金属音がする。

 真っ白な光が景色を包む。
 目を開けると、自動販売機と電柱の間に大きな裂け目ができていた。
「おまえらそろそろ帰れよ」
 後ろから大人たちの声がする。それからサユの声も。
 光に吸い込まれるように、一歩踏み出す。
(まだ帰りたくない)
 そう思いながらも僕の体は空間に出現した裂け目を通り抜ける。

「いたっ」
 コンクリートの塀におでこをぶつける。振り返るとそこには電柱があった。
「うわ、びっくりした!」
 自動販売機の前に立っていたオオオカさんだかオジロさんだかが声をあげる。
「亨じゃん、なにやってんのそんなところで」
 僕はまだぼんやりと電柱の後ろに立っていた。