放課後、僕はいつものように二百円の小遣いを貰い、ウエストポーチにシールと錠前を入れて家を出る。
 よしなが酒店はまだ誰もいなかった。公園にはまばらに子供の姿が見える。僕の友達はまだ来ていない。オーちゃんと登ったクヌギの樹は切り株になっていて、ジャングルジムはそこに存在しない。

 ウエストポーチから錠前を取り出す。
「この数字が多分年代で……」
 僕は慎重にダイヤルを回す。だけどどの数字に合わせてもロックは開かない。
「一九八五でしか開かないようになってるのかな」
 本来錠前とはそういうものだ。
 公園の片隅で周囲を見渡す。こちらを見ている子供はだれもいない。
「一九八五」
 数字を合わせると、錠前がかちりと開いた。目の前が光に満ち空間が裂ける。
 この光を見ると僕は自分の意思で動くことができなくなる。操られるように光の中へ。

「うわっ」
 地べたに落ちていたリカちゃん人形を、うっかり踏みつけてしまった。砂場で遊んでいた女の子がそれを見て泣き出す。
「ご、ごめんね」
 人形を拾いながら景色を確認する。クヌギの樹が砂場に木陰を作っていた。