僕はベンチに腰掛けて、リカちゃん人形に巻きつけてあった花柄のハンカチを外す。人形は白い下着だけをつけていた。ハンカチを広げてから土を落として、もう一度丁寧に巻きつける。
「これ、ホルターネックって言うんだよ」
 ハンカチの端と端を合わせて胸元で捻り、首の後ろで端を結ぶ。恨めしそうに僕を見ていた女の子の表情が変わる。
「すごい!」
 彼女は僕の隣に座って目を輝かせている。僕は結び目をふんわりとリボンのように広げてから、ウエストの高い位置をゴムで止める。
「はい完成」
「ありがとう!」

「へえ、器用なんだね」
 いつの間にか僕の後ろにはサユが立っていた。
「お母さんが好きなんだこういうの。いつもワンピースとか作ってる」
「よかったね、チイちゃん」
 女の子は人形を抱きしめたまま走って行ってしまった。サユが僕の隣に座る。
「お母さんデザイナーなの?」
「半分趣味みたいな感じ。作った服はネットオークションとかで売ってる」
「ネット……?」
 この時代にはインターネットオークションは無かったのだろうか。首を傾げるサユが吉永さんと重なって見える。僕と同じ年齢くらいなのに大人びていて、なんだかむずむずした気持ちになる。