僕はオーちゃんの顔を見つめる。
「賭けたのは、この宝箱だけ?」
「そうだけど」
 オーちゃんの声が少し動揺する。
 オガミさんだかオノミチさんだかから似たような話を聞いていた。子供の頃、長澤早百合を賭けて戦ったという話。子供の遊びだけれど、彼は大人になってもその約束を律儀に守ったと。

 オーちゃんに手伝ってもらいながら樹に登る。昨日よりはうまく登れるようになった。
「リュウタとケンジはおとりになれ。俺たちはここで宝箱を守る」
 作戦会議をするオーちゃんの横顔に、彼の面影はあまり見えない。だけど茶色い癖毛や口調など、似ているところもあると言えばある。
「トールが奇襲をかけるんだ」
「僕が?」
「トールはジャングルチームにあまり顔を覚えられていないからな」
 葉陰から公園を観察する。ジャングルジムの下を五人の男子が守っている。てっぺんには眼鏡の少年と宝箱。
 もしオーちゃんが、子供の頃のオバタさんだかオクオさんなら。僕は思いを巡らせる。ジャングルチームのリーダーは、将来吉永さんの旦那さんになる人で……。
「この戦いはクヌギ軍が負ける?」
「弱気なこと言うなよ!」
 オーちゃんに頭を叩かれる。だけどこの戦いでオーちゃんたちは負けて、サユは勝者と結婚することが既に決まっているはずだ。