今になってようやくあの人の名前を思い出す。岡田さんだ。よしなが酒店の片隅でいつもカップ酒を飲んでいて、朝は缶コーヒーを飲むのが日課で、過去を悔いている、岡田工務店の二代目。

 オーちゃんが父親を連れてくる。さっき、よしなが酒店のカウンターにいたおじさんだった。酒屋の前掛けをつけたまま、こちらに走ってくる。
「岡田くん、大丈夫か」
「うん……」
「うわ、ぱっくりイッたなあ!」
 おじさんが傷口を見て驚く。ジャングルチームのリーダーは、片目を閉じたまま痛みに歯を食いしばっている。
「とりあえず病院に行こう。岡田工務店には電話しといたから。治、おまえ店番しとけ」
「わかった」
 オーちゃんが神妙な顔でうなずく。

 僕のせいだ。公園を出て行くおじさんとリーダーから目が離せなかった。僕のせいだ。ジャングルチームのリーダーは岡田さんで、オーちゃんは吉永さんの旦那さんだった。全ては僕のせいだ。この戦いに負けた岡田さんはサユのことを諦める。僕のせいだった。オーちゃんとサユは結婚する。全部僕のせいだ。長澤早百合は吉永早百合になってよしなが酒店を守り続ける。僕のせいだ。不機嫌な吉永さん。
 僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ。

 サユが僕のことを見ていた。悲しそうな顔で。